府中緊急派遣村

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学習・講演会「貧困と依存症~その背景と回復を考える~」①

学習・講演会
「貧困と依存症~その背景と回復を考える~」

イメージ 1 9月24日(土)午後6時30分、府中グリーンプラザ第5会議室において、府中緊急派遣村、学習・講演会「貧困と依存症~その背景と回復を考える~」がおこなわれ、行政、諸団体からの参加を含め26人が熱心に耳を傾けました。
今回は独立行政法人福祉医療機構の助成後、初めての事業になります。
アルコール依存症ギャンブル依存症の当事者2人のお話しの後、自らもアルコール依存症になり、今は常勤ケースワーカーとして就労している、くにたち・あみてぃの高浜敏之さんが生い立ちから克服までの体験を交え依存症の背景としてあるもの、その回復について語りました。

依存症は成育環境に関係があると言われている。機能不全の家庭が多い。依存症が貧困を生み出し、貧困が依存症を生み出す。このような負のスパイラルにおちいりやすい。また、依存症の裏にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)が隠れていることが多い。
依存症の進行は社会生活の崩壊、精神の崩壊、身体の崩壊と進む。依存症になると社会生活がうまく送れなくなり、精神を病み、肝臓などの内臓疾患により命を縮めてしまう。うつで自殺することもある。
依存症からの脱却はまず自分が病気であることを認めるところから始まる。「底つき体験」をしないと無理ではないか。

回復・問題解決のために、
①まず生活の崩壊から始まるので、住居、収入の確保が必要
②精神面については、傷ついた経験や体験を話すことでいやされ解消していく。そのための自助グループ、治療施設、居場所作りの治療共同体が必要
③依存症になったのは自分のせいばかりではない。DV、虐待、いじめは本人のせいばかりではない。自己責任論では解決できない。社会を変えないといけない。

最後に、支援者の心得として、自分自身でもよくわからず失敗だらけだが、例えば、アルコール依存に対してアルコールを隠すなど、依存の原因を止めさせようとするような行為は誤りである。逆効果。また、周りの人が肩代わりしてはダメ。境界線を引いて見守ること。また、回復していくためには仲間が必要である。経験的に依存症と貧困は関連があるように思う。依存症になるのは本人の責任ではないが、回復は本人の問題である。

この後、更に各団体や参加者からの感想や活動報告などがおこなわれ閉会となった。
会場アンケートでは、「とても満足」、「役立つ情報が得られた」に多くの方が丸を付けて下さいました。ありがとうございました。

また、後日、参加者の武田さち子さんから、この学習会の報告をご自身のホームページにまとめた、とのお報せがありました。ご本人の承諾を得て、転載します。
なお、ご本人のホームページは
「日本の子どもたち」
http://www.jca.apc.org/praca/takeda/
です。こちらもご覧下さい。

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2011年9月24日、府中グリーンプラザ会議室で、府中緊急派遣村主催(くにたち派遣村・狛江派遣村・たま・多摩川.com くにたち・あみてい 立川マック 協力)の講演会(独立行政法人福祉医療機構 社会福祉助成事業)に出席した。
テーマは、「貧困と依存症 ~その背景と回復を考える~」。
当日のメモをもとに、内容を自分自身の備忘録として、以下にまとめた。
ただし、正確ではない部分もあると思われる。

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最初にお二人の体験者から報告があった。
Aさんは50歳。病気になって思うように働けなくなった。会社をクビになり、アルコール依存症になって、妻と離婚した。

Bさんは38歳。子どもの頃から真面目な性格。幼稚園の頃から人付き合いが苦手で、いじめられた。
いじめは、幼稚園から高校まで続いた。
工業高校では、同級生に不良が多かった。彼らはパチンコをやっていた。自分はああはなるまいと思いつつも、あこがれがあった。
学校を卒業して溶接工になった。社会人になっても、友だちができない。さみしくて、賑やかな場所を求めた
最初はゲームセンターでパチンコゲームをした。しかし、すぐに物足りなくなって、パチンコ屋に行くようになった。
当初は1回につき2、3千円以上は使わないなど、自分でコントロールができていた。
それが1回勝ってから、味をしめた。その時の感動が忘れられない。
勝つまでやるようになった。つぎ込む金額が上がり、よりギャンブル性の高いものへと移行した。

当時は景気もよく、月20万円から30万円の給料をもらっていた。会社借り上げのアパート暮らしだったので、生活費もそれほどかからない。
ギャンブルをやらないと自分ではない、そんな感覚になっていた。一日も欠かせなくなった。
会社が終わる夕方6時頃から11時頃まで、パチンコをして、夜11時に閉店になると、ゲームセンターに行く。12時まで遊んだ。
借金をしてまで、ギャンブルをするようになった。
消費者金融に行って、勝手に両親を保証人に仕立てて金を借りた。驚くほど簡単に金が借りられた。借金は500万円にのぼった。食費を削って、ギャンブルにつぎ込んだ。
「自分はギャンブルの才能がある。」なぜか自信があった。

借金に追われた。仕事にも支障をきたし、アパートを飛び出して、5年以上、路上生活をした。
2回ほど行政が運用する宿泊施設にも入ってみたが、集団行動が苦手で、性格的にあわないと感じた。
アパートに入居できるまでの間、役所で毎日5000円支給してくれた。連休が続いたときに、3日分として15000円もらった。
路上生活をしている間は金がないので、ギャンブルも止まっていたが、もらったばかりの15000円をギャンブルにつぎ込んだ。
役所の人に事情を話したところ、依存症リハビリ施設を紹介され、現在まで1年3カ月通っている。
現在、借金は棚上げ。朝、昼、晩と1日3回のミーディングに参加する。
今も人との付き合い方に不安があるが、仲間と世間話ができるようになった。

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メイン講師は、くにたち・あみてぃのTさん。
自身も、18歳からアルコールを飲み始め、35歳で「底つき体験」をするまでの17年間、アルコール依存症だったという。ほかにギャンブルや薬物、DVもあった。
依存症と成育環境は関係があると言われる。機能不全家庭が多い
Tさんは4人家族。相対的には貧乏だったが、子どもの頃は、自分の家は貧乏だという実感はなかった。
ただ、アパートに風呂がなかったことから、いじめられたりした。
隣に同じくらいの子どもがいて、母子家庭だった。彼は10代後半には暴力団員になっていた。

父親はアルコール依存症で、母親に暴力も振るった。母親は自分が受けたストレスを子どもにぶつけた。
アルコールを憎んでいた。生きていてもいいことはない。はやく死にたいと思っていた。
しかし、アルコールを飲むと、抑うつ感やトラウマ、不安、苦しみなどが、忘れられ、楽になった。
ブラックアウトするまで飲んだ。いつもは世界と自分との間の断絶が、仮想的につながる感覚になった。

依存症は、複数の依存症がクロスすることが多い。
35歳のときに、500万円の多重債務があった。マリファナもやった。疎外感からの逃げ道となった。薬物は、使用する仲間とのつながり、きずなでもあった。しかし、Tさん自身はマリファナは依存にまでは至らなかった。楽にしてくれたのは、アルコールだった。

大学にも行っていた。しかし、最初は2年で中退。その後、24歳で大学に入り直し、7年間かけて卒業した。
アルコールやマリファナの影響もあって、仕事が続かない。20代で30個の仕事を転々とした。
朝、起きられなくて、親せきが死んだことにするなど、いろいろ理由をつけて仕事を休む。その言い訳も尽きると、連絡もせずに、途中でバックれる。

依存症になると、①社会、②精神、③身体、の順に壊れていく。
親しくなった女性もいたが、DVを繰り返した。
アルコールや薬物の影響で、感情のコントロールが効かなくなる。精神的に、苛立ち、不安感。他罰的になって、相手を攻撃する。
うつやパニック障害にもなる。
うつから自殺に至ることが多いことは知られている。年間自殺者3万人のうち約半数から、亡くなったときにアルコールが検出されたという統計もある。
身体的には、アルコールでは肝臓をやられやすい、脂肪肝はガンになりやすい。
アルコール依存症のひとの平均寿命は52歳と言われる。美空ひばり石原裕次郎も52歳で亡くなった。

依存症は「否認の病」と言われる。Tさん自身、20代前半から依存症になっていて、いろんな問題を抱えていたが、自分では認めなかった。
「否認の病」であるがゆえに、他人が本人に自覚させることはできない。「底つき体験」をして、本人がもうだめだと思わないと無理。
なぜ、「否認」するのか。依存症は、本人にとっては自己治療、治癒行為だからだ。
たとえばアルコールは、うつの治療薬。本質的な解決方法までの過渡的治療薬。
芸能人の押尾学事件で脚光を浴びたMDMAもPTSDの治療薬として活用できないかとの、研究が進められている。

本当の病気は、うつや不安障害、対人恐怖症。いちばん多いのはトラウマ。
依存症の裏に、PTSDが隠れていることが、すごく多い。ポスト・トラウマティック・ストレス障害というが、トラウマとストレスの間には明確なラインがない。
複雑性PTSDというのもある。長期間ストレスにさらされることで発症する。たとえば、親から愛されない、教師からお前はダメだと言われ続けるなど。