府中緊急派遣村

突然の解雇、退職強要、名ばかり管理職、サービス残業、生活保護申請、生活相談など、お気軽にご相談ください。住所、連絡先等はhttps://fuchuhakenmura.hatenablog.com/entry/10931955

府中緊急派遣村を通年化

府中緊急派遣村を通年化   松野 哲二

 派遣問題は現代の縮図である。日比谷の年越し派遣村はそのことを如実に示した。私たちは、企業の巧妙かつ卑劣な派遣切りを許さないために政党や既存の労組を越えた地域での相談の窓口を常設する必要に迫られている。そこで、2月20日、府中緊急派遣村を立ち上げ、東芝NECサントリーの各工場に、派遣切りを許さず労働条件の向上を求める旨の要求書を提出したがいずれも門前払い。4月18日、19日には府中公園で「三多摩大相談会」を開催。三鷹や立川で野宿者支援に取り組む人たち、弁護士や医師、社会保険労務士の方も準備段階から合流してくれる。NHKをはじめマスコミの協力報道もあり相談は2日で57件、ボランティア登録は70名、カンパも12万円(総額では70万円)に及び、米や野菜、家具、衣類なども多量に寄せられた。翌日の20日には府中市には派遣村として生活保護申請を一括集団で行い、午後にはハローワークに集団で就職支援要請を実行。
 相談を大別すると、労働17件、生活35件、医療5件。その内、生活保護申請、受理が15名(内3名が施設保護)、解雇撤回要請が3名(2名は団体交渉中)。
 さて、これ以降相談は連日のように続いているが中間総括として第1に、派遣村は貧困と人権の地域相談窓口。第2、解雇相談の多くは泣き寝入りせざるを得ない過去のことで通年化の必要性を実感。第3、東芝で派遣切りされた日系ブラジル人は「派遣会社が半年後の雇用を連絡してくれる」と信じて争いはしたくないという。相談に行かせないマニュアルある。第4、村が労組に。私たちは、「支援する、される関係ではなく共に悩み考え学び行動し、共に解決に向かう」を目指している。5月24日、相談者たちを含む57名が報告集会につどい府中緊急派遣村労働組合を結成した。第5、自分の悩みをどこに相談していいか分からない、あるいは役所に相談したが聞くだけで解決しない、役所の無料法律相談では結局弁護士事務所を紹介され解決には多額の着手金が必要と言われたなど既存の各種専門相談窓口は有用性をなしていない。第6に、役所の貧困相談は貧困ビジネス窓口。生活保護憲法25条を根拠とする。500万人が最低基準レベル(約月額13万円)以下(参照・『生活保護申請マニュアル』湯浅誠書・同文館出版)という日本社会で、この底辺を支える窓口が福祉事務所だが実際に申請者に同行して体験したことは、窓口の基本は門前払い、悪人扱い、施設送りである。派遣村としての集団申請は、既に日比谷派遣村の実績があるためか格段の扱いで12名が居宅(アパート)保護受給を勝ち取ることができた。しかし、単身申請すると施設に送られ2週間身辺調査と細かな追求を受けやっと保護が決まってもほとんどが居宅ではなくそのまま施設に。6畳に2名、3名部屋で8時門限、面会禁止、禁酒など細かな規則に縛られる。健康で文化的な生活などほど遠い。しかも、保護費12万~13万の内、施設費が9万~10万もの高額となる。3食付の所もあるがカップ麺が出たりする。6畳2名で1名に住宅費として4万円も取る。本来ならば私たちの社会の貧困問題を、憲法で保障する人間の尊厳を失わない生活を「民間」に丸投げすることは恥ずべき行為である。私たちが体験する施設は「エスエスエス」と「グットライフCP」の2社だが、行政と連携というより結託といった方がより的確である。今後の地域労働運動の欠かせない課題はこの貧困問題、つまり労働と福祉の結合、行政の人員の拡充と職員の人権感覚、市民住宅の設置による貧困ビジネスからの解放だと痛感した。
 さらに、解雇撤回の交渉の中で浮き彫りになったことは、派遣会社が派遣から請負に業態を変えつつあり、派遣隠し、偽装請負が進むこと、手取り17万円の派遣労働者の解雇の団交に毎回経営法曹の弁護士が2名も同席するなど経営側の危機感が強いことである。そして団交中の2名はいずれも派遣会社の正社員でありながら派遣先のNECで契約終了即解雇である。派遣法そのものを廃止させ事業主の直接雇用を義務付けない限り労働者の悲劇は続く。しかし、日頃は労働運動に縁のない人々がつどう派遣村労組は「あんたの言うこと世間じゃ通用しないよ」、「一人で子育てするって大変なんだよ、それを解雇すんの」と市民感覚の交渉もできている。
 行き場のない社会で生き場を共に創る、それが今も続く派遣村である。私たちに支援を、ではなくあなたの地域に派遣村を。